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番外編恋の吊り橋作戦
「未知、声を出すなよ。見付かるから」
「え?誰に見付かるの?」と聞き返そうとしたら、グッと手を引かれ、そのまま抱き締められた。気づけば彼の胸のなかだ。
「暑いのにごめんな」
「ううん、大丈夫です」
温もりと鼓動が嬉しくて、なぜか敬語になってしまった自分がおかしかった。
されるがまま彼の胸のなかに身を委ねていると、
「パパ、れいじさんどこ」
一太の声が聞こえてきた。
「まだ見付かるわけにはいかない。癒しをチャージしないと隠れられない」
「もしかしてかくれんぼの途中だったの?」
「あぁ、そうだ。さっきまで鬼はミツオだったんだが一太に変わったみたいだ。暑さに負けずみんな元気だな。子どもってスゲェな」
鼓動を聞いていると、髪を撫でながら彼が口を開いた。
温かくて、心地がよくて、出来ることならずっとこのままでいたい。
「あっ!れいじさん見っけ!」
「あれ~~なんで分かったんだ?」
「だって頭は隠れててもお尻が出てるんだもの。バレバレだよ」
キャッキャッと明るく笑う一太の声が聞こえてきた。
「たまにはお兄ちゃんにも休みが必要だと思って連れ出しのはいいのが、嫌な思いをさせてしまったから、少しは気晴らしになればとかくれんぼをはじめたんだ」
「そうだったんだ。遥琉さんありがとう」
「だから礼はいらないっていつも言ってるだろ?」
額にかかる髪を指で左右に分けると、身を屈めチュッと軽くキスをしてくれた。
「これで十分だ」
目があうとにこっと優しく微笑んでくれた。
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