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番外編恋の吊り橋作戦

「ミツオ、いつまでねっぱってんだ。動いていいぞ」 「いや、でも……」 「真面目な男だな、お前は」 弓削さんがふと手を伸ばしミツオさんの髪にそっと触れた。 「明るい茶色の髪をしているなとは思っていたが地毛か。染めていないんだな。綺麗な色、してんな」 「そうですか?いままで言われたことが一度もないんで、嬉しいです」 照れて頬を赤らめるミツオさん。 「表情がないとヤスが心配していたが、なんだ人並みに照れて、笑えるんじゃねぇか。こっちのほうがめんげ」 「めんげ?」 ミツオさんの頭に大きなハテナマークが浮かんだ。 「可愛いって意味だ。あまり深い意味はない」 「いや、あの……」 「なじょした?」 ミツオさんがビクビクしながら庭を指差した。 ふくれっ面をしてこっちを睨み付けていた。 「なんだヤスじゃねぇか。なんで怒ってるんだ?」 「原因は多分弓削さんだと……」 相手はまさに雲の上の存在。意見するのも憚ると自然と小声になるミツオさん。 「別に怒らせてねぇぞ」 「だからそっちじゃなくて」 焼きもちを妬いているんですとは言えず。ねえさん、俺の代わりに説明してやってくださいと目で訴えかけられた。 「ねえさん、どうかしました?」 「ゆ、弓削さん、まずはその手を離しませんか?」 「手?」 怪訝そうに首をかしげながら下を見ると、ミツオさんの手を握っていることにようやく気付いたみたいだった。

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