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番外編恋の吊り橋作戦

「なんだ、また痴話喧嘩か。相変わらず仲がいいな」 「オヤジ、笑って見てないで二人に家に入るように言ってください」 「焼きもちを妬いてきめっこしているってなんで弓削は気づかないんだ?あれだけ好きの気持ちがただ漏れなんだ。普通気付くだろ?」 「弓削にはちっと難しいな」 「そうか、難しいか」 柚原さんに間一髪入れず即答され彼がくすりと笑った。 「蒼生、明日帰るって言ってましたよ」 「足止めをくらい予定が狂ったからな。子どもたちは喜ぶな。その後鷲崎から連絡はあったか?」 「はい。容体は変わらず。依然として予断を許さない状態です。翔が七海は関係者だと病院に説明してくれて七海が付き添っています」 「そうか。あんなに晴れていたのに。最近雨ばかりだな」 彼が鈍色の空をふと見上げた。 弓削さんは髪や服が濡れているのにそんなことは一切気にせず座り込んで動かないヤスさんに手を焼いていた。 「ほら、ヤス。風邪をひくから家に入るぞ。オヤジもねえさんも心配しているから」 「もし風邪をひいたら俺の看病をしてくれる?」 「あぁ」 「ずっとつきっきりで?」 「ずっと側にいる。約束する」 「じゃあ、ここにいる」 「は?なんでそうなるんだ」 やれやれとため息をつく弓削さん。 痺れを切らしたあおお兄ちゃんが彼より先に動いた。  「四季みたく抱っこして欲しいんだろ?俺でもいいか?」 弓削さんとヤスさんに傘を差し出したのはあおお兄ちゃんだった。

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