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番外編恋の吊り橋作戦
「あの、もしかして喧嘩を売ってますか?」
「売ってないよ。弓削はまだ手が震えるんだ。無理をさせるな。あとで思う存分抱っこしてもらえばいいだろう。ちゃんと肩に掴まってろ」
弓削さんに傘を渡すとしゃがみこんでヤスさんのお尻の下に手を差し入れた。
「いいです、一人で立てますから」
「遠慮するな」
ヤスさんの大きな体をいとも簡単に軽々と抱き上げるあおお兄ちゃん。
「千里も軽いが、お前も軽いな。仕事が忙しいのは分かるが、ちゃんと飯くらい食え」
「心配されなくても食べてます」
「そうか。余計なお世話だったな。暴れるな。落とすぞ」
雨に濡れるのも気にせず、あおお兄ちゃんがクククと愉しそうに笑い出した。
「いやな、昔お前と同じように俺も焼きもちを妬いて、駄々をこねて、兄貴によくおんぶしてもらったり抱っこをしてもらったんだ。信孝じゃ嫌だ。兄貴がいいってな」
「蒼生さんはいいな。俺なんか、一回もおんぶしてもらったことないです」
下唇を伸ばすヤスさん。
「おぃ、おぃ、いつの話しだよ、それ」
彼があおお兄ちゃんに慌てて聞いた。
「しょっちゅう喧嘩をしていただろう?俺と信孝とチカで、誰が兄貴の隣に座るかで。チカなんかいつも信孝に負けてギャンギャン泣いていたっけ。信孝も大人げないからな。年下に譲るということは絶対にしなかった。あの頃が懐かしいな」
あおお兄ちゃんが感慨深そうに答えた。
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