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番外編恋の吊り橋作戦

「信孝さんってその頃からですか?」 ヤスさんが聞いた。 「あぁ、そうだ。なんせ将来結婚の約束をしていたくらいだからな」 「おぃ蒼生、あとでツラ貸せ」 彼の表情が険しくなった。 「嘘は言ってない。本当のことだろ?」 あおお兄ちゃんの一言に場が一瞬静まり返ったけど、その直後ざっと大粒の雨が降ってきた。 「信孝のほうが年上なのに兄貴に甘えてばかりいて離れなくてな。中学校を卒業したら福島に行くって信孝から聞いたときは天地がひっくり返るくらいに驚いた。ナオと結ばれてこれでやっと兄貴離れが出来ると喜んでいたんだが、それがどうよ。離れていた時間を埋めるように兄貴にベッタリなのは何でだ?」 「何でって聞かれてもな。俺も教えて欲しいくらいだ」 初めて聞くことばかりで驚いていると、 「理解ある伴侶で良かった。みな言ってるだろ?そう意味だったということだ」 「弓削さんは知っていたんですか?」 「ほとんど酒を呑まない信孝があとにも先にも一回だけベロベロに酔っ払ったときがあって、そのときに自分からボソリと言ったんだよ。それであぁ、なるほどと納得した」 弓削さんの言葉は説得力があった。 パパ、靴冷たい。ピチャピチャ言ってるよ。可愛らしい声が聞こえてきて。雨なんか降るなんて聞いてない。続けて信孝さんの声が聞こえてきた。 「ほら、噂をすれば。言わんこっちゃない」 弓削さんがポツリと呟いた。

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