3849 / 4006
番外編恋の吊り橋作戦
「あ、あの……」
信孝さんとの話しにすっかり夢中になっている弓削さん。当然ながらヤスさんは面白くない。教えてあげたほうがいいのかな?それともほっとく?いや、いや、知っているのに知らないふりをするのは駄目でしょう。悩んだ末に弓削さんの袖を掴みツンツンと引っ張った。
「ねえさん、なじょした?」
「橘さんがヤスさんと一緒に一服したらって話していたのをすっかり忘れていて」
「橘が?」
怪訝そうに首をかしげる弓削さん。
「は、はい」
「嘘じゃないですよ。本当ですよ」
嘘も方便という言葉があるけど、勘の鋭い弓削さんに嘘なんかつけない。すぐに見破られるから。
「未知がいままで嘘をついたことはあるか?」
彼がナイスなタイミングで助け船を出してくれた。
「ないです」
「一服ついでに着替えをしてこい」
彼に言われ、弓削さんがヤスさんに行くぞと声を掛けた。
「はい、兄貴」
ついさっきまでブスッとして信孝さんを睨み付けていたヤスさん。弓削さんのうしろを嬉しそうに小躍りしながらついていった。
「遥琉さん、ありがとう」
「礼はいい。さっきのことは気にすることはないからな」
「信孝さんと支え合って生きてきたことは分かっているから。気にしていないよ」
「未知にそう言ってもらえて良かった。実はな、未知に嫌われたらどうしよう。気が気じゃなかったんだ」
彼が胸に手をあてて安堵のため息をついた。
「それはそうと蒼生」
彼に凄まれてぎくっとするあおお兄ちゃん。
「そう睨むなって」
小さな声でボソボソと呟いた。
ともだちにシェアしよう!

