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番外編恋の吊り橋作戦

「こともあろうかオヤジに色仕掛けを仕掛けたんですよ、あの女。後世まで語り草になるかもしれませんよ」 「あ、あの、話しが見えないんですけど……」 柚原さんが何のことを言っているのかまったく分からなかった。 「見えなくていいです。波風を立てないで下さい。未知さんがあれこれと心配しますし、蒼生さんと信孝さんにこれ以上焼きもちを妬かせないで下さい。ただでさえ面倒くさいのに更にややこしくなります」 「なんで?面白いのに?」 「面白くありません」 橘さんがきっぱりと言い切った。 「あ、あの……あの男の子は見付かったんですか?」 今にも喧嘩がはじまりそうな不穏な空気を一掃するためには話題を変えるしかない。おっかなびっくり聞くと、 「結論から言うとサツに無事に保護された。でも、そこまでの経緯がな……」 そこで言葉を濁す柚原さん。 「未知さんならなんとなく予想することが出来ませんか?」 「予想ですか?」 彼がたまたま菱沼金融にいたとき、そうとは知らない男の子の母親が必ず返済するからもう少し待ってくれと言いに来た。その時に色仕掛けを仕掛けられた。つまりそういうことなのかな。 「オヤジは一切目もくれなかった。俺も安く見られたものだと呆れてため息をついていた」 「あ、でも宋さんが会った女性は?」 「会話から推測するに母親の代わりに子どもの面倒をみていた女みたいですよ。勧誘するときに子どもを連れて歩いたほうが相手に警戒されにくいですからね」 「その女性は?」 「事情を聞かせてくれとサツが連れていった」 とあくんと今も意識が戻らない男の子の事がふと脳裏に浮かんだ。お母さんが迎えにきて良かったね、嬉しいはずなのにちっとも嬉しくないのはなぜだろう。

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