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番外編恋の吊り橋作戦
「未知がもう二度と口を聞いてくれないかと思った」
彼が隣にゆっくりと腰を下ろしてきた。
「すごく綺麗な人だったって弓削さんから聞いたよ」
「未知のほうが何倍も何十倍も綺麗だよ」
歯の浮くような台詞をさらりと口にする彼。
「実はな色仕掛けをされているとは最初気付かなくてな。妙にしおらしくあざとい態度で胸元をやたらと強調してくるからなにやってんだこの女、頭大丈夫かって思っていたんだ。ヤスたち若いのを見たらみんなして笑うのを必死で堪えているんだ。それでようやく気付いた」
「遥琉さんらしい」
「だろ?未知を心底愛してるんだな、改めてしみじみとそう感じたよ」
「男の子はどうなるの?」
妙に気恥ずかしくて。面と向かって彼を見れなくて。わざと話題を変えた。
「児童相談所に一時保護されるらしい」
「じゃあとあくんに会える?」
「会えるかもな」
本当の兄弟であって欲しいと心のなかで願った。
「あの子どもたちの涙みたいな雨だな。泣いても泣いても涙が枯れることはない。相変わらず未知は恥ずかしがりやだな。照れている未知が可愛い。このまま押し倒したくなるだろ?」
色っぽい眼差しを向けられてドキッとした。
「冗談だよ。隣で寝ているヤツを起こしたらそれはそれで面倒くさいからな」
ニヤリと笑う彼。
「未知、愛してるよー!お兄ちゃんっておいでー!」
あおお兄ちゃんが突然そんなことを言いながら両手を広げたからビックリした。
「寝ているときも賑やかなヤツだな。普通そこは千里だろ。千里に怒られても知らねぇぞ」
彼が苦笑いを浮かべた。
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