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番外編恋の吊り橋作戦

「優輝おいで」 彼が軽々と片手で優輝くんを抱き上げた。 「アイスクリーム何が好きなんだ?」 「えっと、ね、………」 しゃくりあげながらも言葉を紡ぐ優輝くん。改札口を出たとき振り返ると、駅員が救急隊員に状況の説明をしていた。蜂谷さんがたいしたことないと答えるものの青空さんはストレッチャーに乗せられてしまった。 「救急隊員の顔が引きつっています」 「無理もない。全身にドクロの刺青を入れているんだ。ヤベェーヤツにしか見えねぇよ」 「血は青空のですか?」 「違う。ぶつかってきた男のだろう。肩を庇う仕草をして左足を引きずっているように見えたが気のせいだったか」 「誰かに追われ、急いでエレベーターを駆け下りてきた。人様への迷惑を考える余裕なんてこれっぽっちもなかったのでしょうね」 「鴨が葱を背負って来た。ほくそ笑んでいるヤロウが近くにいる。未知と子どもたちを見世物にはしたくない。急ぐぞ」 「はい」 弓削さんたちが一斉に返事をした。 「お祭りが楽しみ~~一太くんは?」 「僕も。実ははじめてなんだ」 「私もはじめて。屋台がたくさん出るって紫さんが言ってたよ」 「そうなんだ」 一太とめぐみちゃんの他愛もない会話にひと時の安らぎを感じながらデパートへ急いで向かった。

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