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番外編恋の吊り橋作戦

「大町商店街振興組合の組合員の卯月さんですよね?」 すれ違いざま男性に声を掛けられた。 「はじめまして、タカマツの高松と申します」 「タカマツってデパートの先にある靴屋か?」 「そうです、さすがは卯月さんです。お隣のかたはもしかして……」 「妻の未知だ」 「はじめまして未知です。主人がお世話になっていす」 慌てて頭を下げた。 「父から店を受け継いだばかりでしてね、卯月さんのことは父よりかねがね伺っていましたので、いつかお会いしたいなとは思っていたんですよ」 「そうなんですね」 「噂以上の素敵な奥さまで、こっちが緊張します」 照れて真っ赤になる男性。 「どうやら痛い目にあわないと分からないようだな」 弓削さんが男性を牽制しながらポキポキと指を鳴らした。 「決してそんなつもりはなかったんです。どうか命だけは……お許しください」 男が両手を合わせて深々と頭を下げた。 「用があるならなんでもっと早く声を掛けないんだ?駅からずっと俺らのあとをついてきたんだろ?いくらでもチャンスはあっただろう」 「え?気づいていたんですか?」 男が驚いたような声をあげた。 「普通誰でも気付く」 「みなさん演技がお上手ですね。おみそれしました。実は卯月さんに相談がありまして、菱沼ビルディングの近くまでは行ったんですが……」 そこで言葉を濁す男性。 「怖い思いをさせてしまったようだな。話しを聞こうか。ここでは人の目もある。立ち話もあれだから場所を変えよう」 優輝くんが彼をじっと見上げた。

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