3875 / 4006
番外編恋の吊り橋作戦
彼が予約してくれたカフェテリアは東京に本店がある人気店の期間限定サテライトショップだった。
「混んでますね」
「そうですね」
「ねえさんと二人きりなんで緊張します」
「僕もです」
弓削さんと目が合うとなんだか気恥ずかしくて。照れてしまう自分がいた。それは弓削さんも一緒みたいだった。
「もしかしてカレーのほうが良かったですか?」
弓削さんがトレイに料理を乗せて運んできてくれた。
「そんなことないです」
「やっぱりアイスのほうが良かったですか?」
「これで大丈夫です」
慌てて首を横に振った。僕たちを見るまわりからの視線が痛い。弓削さんはさほど気にしていない様子だった。店の前では組員が二人警戒にあたっていた。
携帯の画面を何度か見ていたら、
「陽葵ちゃん起きました?」
「まだです。太惺と心望はこれからご飯を食べるみたいです」
ヤスさんには彼のほうから連絡したみたいで、そのうち来ると言われた。ヤスさんに焼きもちを妬かれたらどうしよう。そればかり考えて気が気じゃなかった。生きた心地がしないとはまさにこのことだ。
「ヤスさん遅いですね」
「ねえさんと二人きりなんてそうそうないので、ヤスなりに気を遣っているのかもしれません」
「気を遣っていただけるのは嬉しいんですけど……」
話題を変えようとしたけど弓削さんには通用しなかった。
ともだちにシェアしよう!

