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番外編恋の吊り橋作戦
「ぼくは迷子になってないよ。ママとはぐれた男の子の両親を探すお手伝いをしていたら未知さんとゆげさんを見つけたんだ」
ひょこりと現れた優輝くん。隣には小さな男の子がいた。
「鞠家とミツオにちゃんと言って来たのか?もし言ってないなら大騒ぎになるぞ。店員を呼ばなきゃな。ねえさんはオヤジに連絡してください」
「この子もゆうきっていうんだ。他人には思えなくて。ごめんなさい」
「ごめんをする相手が違うだろ。二人ともここに座れ。動くんじゃねぇぞ」
ドスのきいた低い声にぶるぶると震える優輝くん。男の子なんか今にも泣きそうな顔になった。
「ごめんね。びっくりしたよね。きみもゆうきくんなんだよね?」
怖がらせないように笑顔で声をかけた。
男の子はすっかり黙り込んでしまい下を向いた。そりゃあそうだよね。知らない人ばかりで怖いよね。弓削さんがすぐに店員を連れてきてくれた。
「なんかねあの子を見たら、海翔くんと鉄将くんを思い出したんだ」
男の子を見送ったのちポツリと優輝くんが呟いた。
「そんなに似てたか?」
「そうじゃなくて」
ぐぅーキュルキュルと優輝くんのお腹が鳴った。
「アイスしか食ってねぇから腹が減るんだろ」
「ごめんなさい。すっかり忘れてた」
髪を掻きながらエヘヘと笑って誤魔化す優輝くん。
「オヤジに連絡つきました?」
「はい。ミツオさんが迎えに来るそうです」
「良かった。いや、ぜんぜん良くねぇ」
「弓削さん……?」
「なんでもないです。独り言です」
ニカッと笑う弓削さん。でも目は笑っていなかった。間違いなく怒っている顔だ。めったなことでは怒らないのに。
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