3879 / 4006

番外編恋の吊り橋作戦

「目は口ほどに物を言うからな」 「魚」 「魚?」 「言葉足らずなんだよ優輝は。もっと分かるように言わないと。兄貴を困らせるな」 「だから魚」 「死んだ魚のような目と青ざめた顔をしていた。親がいなくて知らない人ばかりで不安に押し潰されて普通だったらギャンギャン泣いています。でもさっきの子はけろっとしていた。優輝くんが側にいてくれたからだったかも知れないけれど親が側にいなくて逆に安心していたような気がします。あ、あの、これはあくまでも僕個人の考えで……」 弓削さんとヤスさんにじっと見られていることに気付きしどろもどろになりながらも言葉を紡いだ。 「なるほど。でも俺らにはどうすることも出来ない。確たる証拠があれば通報も出来るんだが。一昔前は義理だの人情だのと騒いでいたが、ほっといてくんちょ。おめさんたちには関係ねぇ。人間関係が希薄になってきている。寂しい世の中になったもんだ」 弓削さんが目の前にあった水が入ったコップを一気に飲み干した。 「それ、俺の」 「あ……」 すぐに間違いに気付き、謝罪の言葉を口にする弓削さん。 「別にいいんです」 「そういう訳には行かないだろう。新しいのを持ってきてもらう」 「本当にいいですから」 ピンポンを押そうとした弓削さんをヤスさんが必死で止めた。 「駄目ですよ、押しちゃ。絶対に呼ばないで下さいよ」 ピンポンをささっと隠すヤスさん。

ともだちにシェアしよう!