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番外編恋の吊り橋作戦

「あ、間接ちゅー」 「優輝くん、ストップ!」 慌てて優輝くんの口を押さえた。 「なじょした?」 「なんでもないです。そうだよね、優輝くん?」 「う、うん。なんでもない」 ありがとう優輝くん。話しを合わせてくれて。手をすぐに退けた。 「そうか、それならいいけど……」 弓削さんが不思議そうに首をかしげた。 ヤスさんはというと、弓削さんが間違って口をつけてしまったコップに店員に水を注いでもらい、ものすごく嬉しそうに飲んでいた。 出入り口ではミツオさんが腰を九の字に曲げて先輩たちにひたすら頭を下げていた。 「一太とめぐみちゃんが心配しているからそろそろ帰ろうか?」 「うん」優輝くんが頷いた。そろそろ陽葵が起きる頃だ。 「ねえさん、デザートは?」 「もうお腹がいっぱいで。ヤスさん代わりに食べてくれませんか?」 「俺は構いませんけど……」 「ヤス、俺の分も食べてくれ」 帰り支度をはじめる弓削さん。 「弓削さんはここにいてください。ヤスさんの話し相手になってください」 「ねえさんから離れる訳にはいかない」 「遥琉さんがいるから大丈夫です。退院してからヤスさんとゆっくり話す機会もなかったはずです。お互い忙しくて。すれ違ってばかりで。二人きりになれるチャンスはそうそうないですよ。今日を逃したら次はいつになるか分かりませんよ」 「ねえさんがそう言うんだったら。分かった」 弓削さんの言葉に、テーブルの下で小さくガッツポーズをするヤスさん。弓削さんが好きで、好きでたまらないという思いが表情から溢れていた。

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