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番外編彼のもう一つの素顔
「もしかしたらシャッター通り商店街の再生のため故郷に投資しませんか?必ず儲かります。入院中胡散臭い投資話を何度か耳にした。それに関係しているのかもな」
割烹着姿の弓削さんが目の前を颯爽と歩いていたから、僕も玲士さんも驚いて思わず二度見してしまった。
「弓削さん、なんでそんな格好を……」
「何でって見て分からないか?一太の手伝いだ。スーツが汚れると橘が貸してくれた。変か?」
「いえ、変じゃありません。すごく似合っています」
玲士さんが慌てて首を横に振った。一枚だけと断りを入れて、携帯をすっと取り出すとカシャと写真を撮影した。
「それ、何に使うんだ?」
「内緒です」
玲士さんがふふっと笑った。
「すごく嫌な予感がするのは気のせいか?」
「気のせいです」
「玲士の世話係は確か……」
「ヤス兄貴と俺です」
佐治さんが顔を出した。
「物わかりのいいあんにゃばかりでいいな」
「ミツオも玲士も素直でめんごいです」
「それは良かった。障子を貼らねぇと、忙しいんだ俺は」
弓削さんが逃げるように廊下を歩いていった。
「あ、しまった。撮るのを忘れた」
「ここに入ってますよ」
玲士さんが携帯を掲げると、
「さすがは玲士、分かっているじゃねぇか。弓削兄貴の割烹着なんてそうそう拝めるものではないからな。でかした」
佐治さんに褒められて、玲士さんは嬉しそうにしていた。
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