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番外編彼のもう一つの素顔

「未知さんがゆでたこになってしまいますよ」 「それが見たいんだ。俺も紗智も」 「あの鞠家さん……」 「なんだ?」 「いえ、なんでもありません」 「橘が言いたいのは同じ穴の狢だってだろ?」 「同じ狢ではありません」 「へぇ~~よく言うぜ。マーの声フェチの癖に」 「それは鞠家さん、あなた方もでしょう」 ままたんとまりさん、またはじまったね。遥香が国井さんに小声で話しかけた。 「喧嘩するほど仲がいいってよく言うし。ハルちゃん遊ぼうか?時間がもったいないから」 「うん」国井さんがワイシャツを着るのを待って遥香のほうから手をそっと握った。 「じゃましないので、どうぞごゆっくり」 「ハルちゃん、そんな台詞どこで覚えたんだ?」 「ナイショ」 唇に人差し指を立てる遥香。会わないうちにまた大人になったな。そんなことを話しながら子ども部屋へと向かった。 「空元気ですよ。あぁでもしないと正気を保ってなんかいられませんから」 「また骨の折れる厄介な仕事を押し付けられたか。そういえばさっき新潟に行くって言ってたよな。ちょっと調べてみるか」 気になることでもあるのか鞠家さんが携帯をジャケットの内ポケットから取り出した。 「橘、七海から連絡はあったか?」 「いえ、まだです」 「額田さんの容態について連絡を寄越してくれることになっているんだが。そうかまだか」 邪魔したな、そう言い残して鞠家さんが広間へと向かった。

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