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番外編彼のもう一つの素顔
「誰も連絡を寄越さないということは命の危機を脱したということでしょうね」
「運の強い女だ。さすがは福光の娘だな」
彼の声が後ろから聞こえてきたからびっくりした。いつからそこに?ぜんぜん気づかなかった。
「いつってついさっきだ。未知の姿を見つけて構いたくなった」
「とか言って、逆ではないんですか?」
「暑苦しからねっぱるなって未知に言われるだろう。鷲崎の話しだと福光の後援会が献血の協力をして欲しいとネットに書き込んだらしく支援者が病院に殺到してえらい騒ぎだったそうだ。輸血用の血液は十分過ぎるほどある、腕のいい執刀医もいる、金に糸目をつけないから娘を助けてくれと福光からじきじきに頼まれたんだろう。一般の患者だったらこうはいかない」
「逮捕されて在宅起訴されても影響力は変わりませんからね。逃亡の恐れがない、証拠隠滅のおそれがないと検察は判断はしたようですが……」
「腹黒い化け狸にまんまと騙されたと気付いたときは遅い」
彼の大きな手がそっと手を包み込んだ。ドキドキして顔を上げると、
「俺らには関係のないことだから高みの見物というこうか」
目が合うなりにっこりと微笑んでくれた。
「国井さんに挨拶が先です」
「会ったら挨拶しておく」
「は?」橘さんの顔色が変わった。
「そう怒るな。可愛い顔が台無しだ」
にやりと笑う彼。橘さんがはぁ~と深いため息をついた。
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