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番外編彼のもう一つの素顔

「国井か。久し振りだな」 「度会さん、ご無沙汰しています。姿が見えないので具合でも悪くて臥せっているのかと心配していました」 「この通りぴんぴんしている。俺はしがない隠居ジジイだ。卯月たちのお陰で悠々自適の毎日を送ってくる」 「そうですか」 「これから新潟に行くのか?」 「はい。連れがそろそろ来るので」 「公安か」 「すみません。それはお答え出来ません」 「相変わらずばか正直なヤツだ。命だけは大事にしろよ。チカを一人にするなよ」 「それ、卯月にも言われました」 「そうか。一緒に暮らしていると性格が似るんだな、参ったな。国井、ネクタイが曲がってるぞ。直してやる」 「すみません度会さん」 度会さんが国井さんのネクタイを結び直してくれた。 「おぃ、おぃ、そこの若いの。通学路に煙草を捨てるな。ポイ捨て禁止の立て看板が見えないのか?携帯灰皿を持ち歩くのはマナーだろって注意したらすげぇ睨まれてな。目付きからしてただ者じゃないのはすぐ分かった。こう見えても俺もデカだったからな」 「煙草は吸わない約束だったんですけど、すみません。きつく注意しておきます」 「それとな、こんな物騒なものは外に出てからつけろ。俺らはヤクザだが、子どもたちは関係ねぇだろ?プライバシーってものがあるはずだ。公安から頼まれて断れないのは分かるが、次はこんな好き勝手、許さねぇぞ。たとえ国井、お前でもな」 ドスのきいた低い声でそう口にすると、ネクタイからシルバーのネクタイピンを外すとスラックスのポケットに入れた。

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