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番外編彼のもう一つの素顔

「何事かと思ったぞ」 「悪いな呼び出して」 「外回りをしていたからグットタイミングだったが、打合せ中なら来れなかったぞ」 「本当にすまない」 彼が申し訳なさそうに頭を掻いた。 「卯月が本気で怒るとあぁ、なるんだな。一つ勉強になった。未知と子どもたちを盗撮するなど言語道断。俺も久し振りに頭にきたぞ」 「怒ってくれてありがとう」 「ボスの代わりにいくらでも怒るぞ」 五分ほどその場を離れてすぐに戻ってきた宋さん。ネクタイピンを国井さんに返した。約束の時間に遅れると携帯電話を耳にあてて平謝りしていた国井さんは、ジャケットを肩に担ぐとあわただしく出掛けていった。 「そういえば彼女も監視対象なんだな」 「彼女?」 「パソコンを見れば分かる。最初から逐一行動を監視していた。防ごうと思えば防げた。にも関わらず襲われた。じゃなくて故意に襲わせた。死人に口なし。怖いね、日本の警察って」 額田さんのことだ。きっと。 「宋、このことは……」 「国井も薄々気付いてはいるんじゃない?身内の深い、深い、闇にね」 「二の轍を踏むような真似はしたくない。千里に守ってくれと頼むか」 携帯電話を取り出す彼。 「あ……」 ふと彼と目と目があった。 「千里の声を聞きたいだろう?話しが終わったら代わってくれればいい」 「ありがとう遥琉さん」 彼から携帯電話を受けとると早速お姉ちゃんに電話を掛けた。昨日も一昨日もタイミングが合わなくて電話を掛けられなかったから、何気ない心遣いがすごく嬉しかった。

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