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番外編彼のもう一つの素顔
「データがないだと?あれ、おかしいな。間違えて削除したのかもな。わざとじゃないぞ。忙しいんだ、切るぞ」
一方的に電話を切ると、
「未知、悪かったな」
携帯電話をぽんと渡された。
「国井か?」
「あぁ。悪い子にはお仕置きが必要だろ?」
「国井は上から命令されただけなのに、とばっちりを受けてかわいそうな気もするが」
「連座責任だ。たまには厳しくしないとな。チカに頭をナデナデするように頼んでおいた。説明だけ頼んだ」
「いつの間に……」
「俺は行くぞ。邪魔したな。あとのことは亜優に頼んである」
「助かったよ」
玄関でなく縁側へと向かう宋さん。
「うんこにしか見えない赤色のロゴマーク入りの社用車だからかなり目立つだよ。だから裏口から入った。公安には会いたくないし、お友だちにもなりたくないからな。卯月の偽者とやない金融の件、俺も調べてみる。興味がわいた」
「そうか」
宋さんは両手に荷物を抱えて、ヤベ、間に合うかな。うすらかすらすんなって怒られるな。そんなことを言いながら仕事に戻っていった。
「パパ、ママ、宋さんの声が聞こえたんだけど……やっぱり気のせいだった?」
一太がパタパタと駆けてきた。
「気のせいじゃないぞ。仕事の合間に寄ってくれたんだ」
「ちょっとだけでいいから、顔が見たかったのにな」
「二日会わないだけで寂しいか?」
「うん」
笑顔で即答する一太。
「そうか。宋がそれを聞いたら泣いて喜ぶぞ。今は仕事が忙しいみたいだから、落ち着いたら一太に会いに来てくれるんじゃないかな」
「じゃあ、お利口さんにして待ってる」
嬉しそうな顔をして喜ぶ一太。
彼も顔をほころばせた。
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