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番外編彼のもう一つの素顔
「さすがは亜優だ」
「あぁ。うんと褒めてやってくれ」
「削除されたSNSのアカウントをものの十分であっという間に復元させたんだから、たいしたもんだ」
「パッと見、やない金融のホームページとそっくりだ。まさかこれが役に立つ日がくるとはな」
携帯を操作してスクリーンショットしておいたやない金融の画像を鞠家さんに見せる彼。
「電話番号も住所もでたらめ。貸金業の登録番号も違う」
「俺たちもうっかり騙されそうになったくらいそっくりだ。これじゃあ素人には見分けがつかない。誰だ、コイツ。オヤジに似ても似つかないじゃないか。オヤジの名前を騙るなど言語道断。よほど死にたいとみえる」
鞠家さんが画面に写る男をじろりと見下ろした。
「でっぷりとした男だ。葉巻が似合いそうだ。短足なのに無理して組む必要があるのか?亜優の話しでは宋がそう言っていたそうだ。本部に手配書を頼んだ。この男を探すぞ。新な被疑者が出る前に」
「分かりました」
鞠家さんが背筋をぴんと伸ばし返事をした。そのとき、
「オヤジちょっといいですか?」
若い衆が狐につままれた表情で駆け寄ってきた。
「真っ昼間から出る幽霊っていますか?」
「いると思えばいるんじゃねぇか」
「オヤジとにかく来てください」
若い衆の言葉に、彼と鞠家さんが目を合わせた。
「まさかな……」
「ないとは言いきれん」
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