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番外編彼のもう一つの素顔
「お久し振りね」
「さっきまで一緒でしたよ。容態が急変した、今夜が山かもしれない。そう病院から連絡が来て急いで駆け付けたのに。意味なくないですか?骨折り損のくたびれ儲けって言葉、知ってます?」
「翔さん、そんなに怒らないで」
「信孝だってかなり怒ってますよ。駅のホ―ムで待ちぼうけをくらった裕貴も。いい年してどれだけの人に迷惑をかけたら分かるんですか?深窓のご令嬢様だから一生分かりませんよね。しもじもの者なんて眼中にないですもんね」
「だからごめんなさいって」
額田さんが両手をあわせて謝った。
「イタタ……」
顔を歪める額田さん。
「どうすんですか?飛行機のチケット、キャンセルします?」
「うん、お願い。あと、せ、仙台から乗ろうかなって……」
剣幕をたてる翔さんに、しどろもどろになりながら答える額田さん。
「携帯以外の荷物を全部新幹線に置いてきて、アメリカまでの飛行機代は誰が立て替えるんですか?仙台まで何で行くんですか?」
「……」
矢継ぎ早に質問責めにされ、言葉に詰まる額田さん。
「荷物の方は裕貴が駅員に事情を説明して預かってますから心配はいりません。確認したら財布も盗まれていませんでしたよ」
「何から何までありがとう」
「礼は俺じゃなくて車両を清掃したスタッフと駅員と遥琉と裕貴に言ってください。上澤先生が往診に来てくれます。包帯を交換してもらったらどうですか?着替えは未知に頼んだので、大人しく待っててください。そこから動かないでくださいよ。傷口が広がるだけですよ」
「脅されている?もしかして」
「脅すわけないじゃないですか?」
真顔でふふっと笑う翔さん。表情がかなり怖い。
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