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番外編彼のもう一つの素顔

「おめさん、こだ酷いのによくまぁ、新幹線に乗ったごと。新幹線の中で刺さっちゃばっかで、おっかなくなかったのか?」 「怖いわよ、そりゃあ。でも交通手段が私には新幹線しかなかったから」 「相変わらず肝っ玉が座った人だ」 上澤先生が往診に来てくれた時、たまたま偶然斉木先生が寄ってくれて。包帯を交換するのを手伝ってくれた。 「翔さんと信孝さんに怒られた」 「そりゃあそうだべ。どんだけ心配したと思ってんだ。マ―もナオもおめさんのこと、心配していたんだぞ」 「額田さん、あんたは一人じゃない。心配してくれる人がいるってことは幸せなことだと思わないか?」 「はい。だから自然とここに足が向いたんだと思います。会いたい人がいるなら、会いに行けばいい。簡単なようで難しいですね」 額田さんが自嘲した。 「子供たちが夏休みでゆっくり出来ないと思うが、まずは体を休めることだ。寿と紫さんも治るまでいていいと言ってるし、甘えたらいい」 客間から出てきた上澤先生と斉木先生に、 「一服するぞ」 度会さんがキンキンに冷えたノンアルコールの缶ビールを掲げて声をかけた。 「悪いが、仕事中だ」 「もう五時だ。診察終了の時間だろう。一杯くらい付き合え」 「分かった。ほら斉木さんも突っ立っていないで」 「俺はこれからウ―に会いさ行くんだ」 「いつでも会えるだろう」 上澤先生に手を引っ張られ座布団の上に座る斉木先生。そうそうたるメンバーに囲まれ、ガチガチに緊張していた。

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