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番外編彼のもう一つの素顔
「それ、また見てるんですか?よく飽きませんね」
着替えを持ってきた翔さんがスマホの画面を見つめる額田さんに声をかけた。
「結局いとさんに会うのが叶わなかった」
「そりゃあ、そうでしょう。俺がいとさんだったら死んでもあなた方には会いたくない」
「ずいぶんとはっきり言うのね」
「言わないと分からないでしょう?青空に似てとても素敵な女性ですよ」
「翔さんはいとさんに会えたの?」
「電話で話しただけですよ。福光の婚外子で吉崎翔です。今は、結婚して鬼頭姓を名乗っています。そう説明したら、あなたも使い捨ての駒にされて、さぞや苦労したんでしょうね、いとさんに心配されました」
「そうよね、貴方にも苦労を掛けさせたわね」
「でもそのお陰で、同じ婚外子同士、育った境遇まで同じ、卯月さんと信孝と遼成さん、なかよし兄弟に会えましたよ」
「嫌味をさらりと言うのね」
「ヤクザと知り合いになった俺に父も礼も保身のために距離を置くようになった。すんなりとあの家を出れましたから、万々歳です」
「卯月さんのこと、貴方も好きだものね」
「好きですよ。人として尊敬しているし、頼りがいのある兄貴なので。ヤクザにしておくのは非常に勿体ない人です。あ、それに信孝と卯月さんを取り合うのもなかなか面白いですよ」
「そう。貴方も理解ある奥さまをもらって良かったわね」
額田さんが嬉しそうに微笑んだ。
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