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番外編彼のもう一つの素顔
「呼んだか?」
スッと戸が開いて青空さんが顔を出した。
「呼んではないが、きみのお母さんのことを少しだけ話していた」
「そうか」
「青空、今、手が空いてるか?」
「ちょっとだけなら空いてるぞ」
「そうか。仕事に戻らないといけないんだ。俺の代わりに話し相手になってくれないか?」
「俺が?彼女の?別にいいが、お呼びじゃないだろう?それに汗臭いし、びしょびしょだぞ」
「あとで着替えをしたらいい。とりあえずここに座ってくれ」
翔さんに手招きされ、額田さんが横になっている布団の脇に腰を下ろす青空さん。じゃ、あとは頼んだ。甘いものを買ってくるから。そう言い残し翔さんは慌ただしく仕事へと戻っていった。
しん、と静まり返る室内。
お互い何を話していいか分からず、気まずい空気が流れた。青空さんがポケットから飴の袋を取り出した。
「ぶっきり飴、舐めるか?旨いぞ」
「あ、ありがとう。ここの名物よね、確か?」
「そうだ。全部やる」
「一つでいいわよ」
「遠慮するな。旨いものはみんなで分けたほうが旨い」
青空さんに袋ごと渡され額田さんの目に涙が浮かんだ。
「私のこと、憎くないの?」
「前も言ったかも知れないが、終わったことを憎んでもしょうがないだろう。近くにいるから風呂とトイレに行きたいときは呼んでくれ。世話くらいなら出来る」
「ありがとう青空さん」
額田さんが嗚咽を漏らした。
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