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番外編宋さんのお友だち

「俺だけ軽傷で済んで他の捜査員に顔向けができない」 「人間、生きててなんぼだ。気にすんな」 「変わったな」 「俺は変わってない」 「いや変わった。父親の顔をしている。帰りを待ってくれる家族がいるっていいだろう?」 「あぁ。子育ては大変だが、一人じゃないからな。俺とフ―に奈梛もすっかり懐いてくれて。可愛くて仕方がない」 「そういえば奈梛ちゃんは?」 「一太たちと一緒にいる。お泊まりが出来るって大喜びしていた。晴と未来と真も泊まりに来ているみたいですごく賑やかだった」 「卯月さんは愛妻家で、幹部や舎弟や子どもに好かれている。すごい人だと改めて思うよ。束になっても太刀打ちが出来ない」 国井さんの表情が少しだけ和らいだ。 その頃家では。宋さんの思いがけない告白に衝撃が走っていた。 「悪い、もう一回言ってくれ」 「だから莫《バク》は元カレだって言ってるんだ。ほんの短い彼氏期間だったが、ヤツはスパイだ。監視するよう芫に命じられ俺に近付いたんだ。寝首をとられそうになり返り討ちにしたら逃げた。説明は以上だ。腹が減ってるんだ、飯を食べさせてくれ。さっきから何か入れろと腹がうるさい」 「夕飯が終わったら話しを聞かせてくれ。友だちのことも聞きたい。くれぐれも逃げんじゃねぇぞ」 「了解した。そんなに怖い顔をするな」 宋さんがカレーの匂いがするとルンルン気分で居間へと向かった。

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