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番外編宋さんのお友だち
彼が広間の前を通りかかると、
「国井が無事で良かった」
鞠家さんと蜂谷さんが膝を突き合わせて、なにやら話し込んでいた。
「オヤジ」彼と目が合い、慌てて立ち上がろうとした二人。
「俺のことは気にしないでいい」
彼が優しく微笑んだ。
「オヤジは心が広い」
「俺だったら怒るぞ」
「なんのことだ?」
「宋に盗撮されていたんでしょう?」
「地竜に送るからとやたらと写真を撮りたがっていたのは事実だ。こんなおっさんを撮っても映えないし、若いのを撮れと言ったんだがな」
「宋の友だち、確かりんりんとかいいましたよね?まさかオヤジLOVEだったとは。普通は敬愛するボスなんでしょうけど」
「だから頭が痛いんだ」
「オヤジはモテますからね」
くくっと笑う二人。
「笑い事じゃねぇんだが、嫌いと言われるよりはましかなと割り切ることにした。それはそうと伊澤が持っていたあの写真だが……」
「与党の議員や閣僚の不祥事が続き国民の不信感を買い支持率が低迷して解散総選挙になったのは一昨年だ。礼が立候補を見送り、福光の後援会が政治に興味がなかった額田さんを無理やり担ぎ出して、急遽立候補させた。確か公示日の二日前のことだ」
「それで当選するんだからな」
「それだけ福光の知名度と政財界に及ぼす影響力が強いということだろう。シェドの教団と海堂が選挙に協力したということはよほどやましいことがあるからだろう。ただより高いものはない」
「その時にいとさんのことが表沙汰になっていればもしかしたら青空も千夏親子みたく国からの手厚い保護を受けて帰国できたかも知れない。犯罪に手を染めたのは事実だ。それは一生許されることではない。でも拉致された被害者となれば、また違った生き方があったのかも知れないな」
蜂谷さんの言葉にしんと一瞬静まり返った。
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