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番外編宋さんのお友だち
「手が届きそうで届かないもどかしさというものを最近感じるんですよ」
「救急箱が棚の一番上にあって、爪先立ちになって手を伸ばしてもあと数ミリ届かないとき、もどかしさを感じます。それとはまた違うんでしょうけど」
「いえ、同じです。ねえさんはよく分かっています。オヤジに追い付こうとしても、追い付くまで障害物をいくつも乗り越えないといけない。新入りなんでオヤジの近くにいても、オヤジの背中が遥か彼方にしか見えないんです」
「玲士だけは焼きもちを妬かないと思っていたんたが。熱烈に口説かれているみたいだ。参ったな」
彼が顔に手を置いてくくくと笑いだした。
「こうすれば少しは近くに感じるか?」
彼が玲士さんの腕を掴み自分のほうに引っ張ると、肩をそっと抱き寄せた。
突然のことに目が点になる玲士さん。一瞬固まった。
「いいか玲士、お前は俺の息子だ。せっかく婿に来てくれたのにな。寂しい思いをさせて悪かったな。これからは気後れすることなく堂々と胸を張れ」
体を離す時に肩をぽんぽんと二回軽く叩いた。
「俺、やっぱりオヤジが好きです。リンリンとかいうヤツなんかに負けないよう、オヤジを取られないように気合いをいれて頑張ります」
目をキラキラと輝かせる玲士さん。
自信をすっかりなくし気落ちしていたみたいだったから良かった。いつもの玲士さんに戻って。胸を撫で下ろし安堵のため息をついた。
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