3934 / 4006
番外編宋さんのお友だち
「卯月さん私も連れていって。駄目ならいいけど」
めぐみちゃんの声だ。
「駄目な訳ないだろう。昆虫採集は男の子も女の子も関係ない」
「幸と奈梛が起きたらお願いしますってままたんにちゃんと頼んできたよ」
「そうか。めぐみはえらいな」
一太たち小学生組と晴くんたち幼稚園組。総勢六人。朝から元気いっぱいだ。
これから過足さんの家に車で移動してカブトムシを見付けに行く。過足さんのお祖父ちゃんとお祖母ちゃんは子どもたちが遊びに行くのをすごく楽しみにしているみたいで朝御飯はこっちで用意するからと昨日連絡があった。
「静かですね」
「そうですね」
「小さい子たちが起きてくるまでのんびりしましょうか」
子どもたちが出掛けたあと火が消えたように家の中がしんと静まり返っていた。橘さんと他愛もない話しをしながら台所でお茶を飲んでいたら、
「ただいま」
チカちゃんがひょっこりと顔を出した。
最初は子どもたちがまだ寝ているから起こさないようにと小声で話していると思ったけど、あちこちキョロキョロと見回したり、ちょっとした物音にも過敏に反応するチカちゃんを見て、ここに来るまで怖い目にあったんじゃないか、そう思った。
「遥琉は出掛けてます」
「知ってる。子どもたちと約束をしたからいなくてごめんな、未知がいるからってハルくんから連絡をもらっていたから大丈夫」
「何が大丈夫ですか」
橘さんが語気を強めた。
「本当に大丈夫だから」
「嘘をつかないで下さい。強がらなくてもいいですよ。私だけでなく未知さんだって心配してますよ」
「え?」チカちゃんがギクッとした。
ともだちにシェアしよう!

