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番外編彼が大好きな、彼フェチのりんりんさん

警察官一人死亡、もう一人は現場から何者かに連れ去られて行方不明。と書かれたネットニュースを見せたのは国井さんの上司だと名乗った五十代くらいの警察官だった。隣には若い警察官がびくびくしながら座っていた。 「これは公になっていない。にも関わらずネットに流れた。お前らか、情報を漏らしたのは」 「漏らす訳ねぇだろ。それに警察官が死亡したってはじめて知ったぞ」 「嘘も休み休み言え」 「嘘じゃねぇ。カブトムシを探して朝五時から山の中にいたんだ。つきさっき戻って来たところだ」 「じゃあなぜ乾捜査官がここにいる?」 「実家に帰ってきてなにが悪い?度会さんが千景の親代わりだってことは知ってるだろう?」 「そんなの知るわけないだろう」 ソファーにふんずり返る上司の警察官。高圧的でふてぶてしい態度に、 「佐瀬と若井と同じ穴の狢か」 彼が小さく呟いた。 「なんか言ったか?」 「独り言だ」 彼は冷静そのものだった。 「ほぉ―」 信孝さんを知っているのか、顎髭を指で弄ぶ警察官。 「俺の顔に何かついているのか?」 精悍な眼差しで警察官たちを睨み付ける信孝さん。ついさっきまでりんりんさんに焼もちを妬いていた信孝さんとはまるで別人のようだった。彼がよく言っていた。信孝はスイッチが入るとおっかねぇんだと。 「お前が縣一家の組長の弟か」 「だからなんだ?」 「全然似てねぇーなと思ってな」 「似てなくて当たり前だ。俺は養子だからな」 「だからこんな田舎で燻ってんのか?」 信孝さんを挑発する警察官。意味深な笑みを浮かべた。 「そんなに田舎じゃないし燻っていない。人は優しいし、空気も旨い。住めば都、なかなかいい所だぞ。都会暮らしの貴方には一生分からないだろうが」 信孝さんは余裕綽々とした態度でそう答えた。

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