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番外編彼が大好きな、彼フェチのりんりんさん

「山龍は変わり身の術を使っただろうから、無事だ」 「適当なことを抜かすな」 「適当じゃない。大真面目に言っている」 「どのツラ下げて……」 「どのツラッて言われてもな、困るぞ」 信孝さんに近付き顔を覗き込む宋さん。 信孝さんも宋さんも二人して背が高いから、身長差はあまりないけど、宋さんがかもし出すただならぬ威圧感に思わず一歩後ろへ下がる信孝さん。 真夏なのに衿元を冷たい手で撫でられるようにゾッとしていた。 さすがは死神の幹部。飄々としているのはあくまでうわべの顔で、腹のうちを決して見せない。底知れぬ恐ろしさを持つ。改めて宋さんという男が怖いと感じた瞬間だった。 それはチカちゃんも同じで、ゾッとして身を竦ませていた。 「おぃ、おぃ、二人とも顔が怖いぞ。化け物でも見たか?」 宋さんが愉しそうにニヤリと笑った。 「宋さんの顔のほうがこわいよ。弟たちがこわがるから、ふつうに笑って」 一太に言われギクッとする宋さん。 「だから太惺が下唇を伸ばしていまにも泣きそうな顔をしているのか。そんなにおじちゃんが怖かったか?ままたんよりは怖くないと思うんだが、悪いことをしたな」 向かうところ敵なしだけど、子どもにはめっぽう弱い宋さん。 「そういえばサツに会ったんだろ?どうだった、俺の元カレは?化けの皮を被るのが上手いからなアイツは」 「観察するには飽きない男だ。兄貴や伊澤の目を欺くなど百年早い」 「そうか、やっばりお見通しだったか。遥琉と伊澤は相変わらずすげえな」 宋さんが感心しきりだった。

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