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番外編彼が大好きな、彼フェチのりんりんさん

「痛いからもう少し優しくして欲しいんだが」 「優しくして欲しいなら病院に行け」 「それが出来れば苦労はしない」 背中に黒い龍の刺青が彫られていた。口を閉じ優しい眼差しをしていた。穏やかな表情をしていた。 「あれ、痛いのが好きじゃなかったのか?」 冗談半分に彼が聞くと、 「そこら辺の変態と一緒にしてもらっては困る。でも意外だろ?刺青なんて今どき流行らないよな」 彼に包帯を巻いてもらいながら山龍さんが微かに笑んだ。 「お前らしくていいんじゃねぇか。立派な刺青だ」 怪我の手当てにオヤジを直々に指名するなんていい度胸じゃねぇか、喧嘩を売っているとしか思えない、殺気立つ若い衆を宥めるのはヤスさんたち中堅の構成員たちだ。 「ヤスいつもお前に気苦労ばかり掛けてすまんな」 弓削さんが声を掛けると、 「アイツがいないからまだマシです。佐治とミツオの前でみっともない格好を晒す訳にもいかないんで」 ヤスさんが笑顔で答えた。 「兄貴って弓削さんの前では乙女ですよね」 一人の若い衆がボソリと呟いた。その言葉にどきっとするヤスさん。 「そんなに違うか?」 「いえなんでもないです」 まさか聞こえていたとは思わなかったのだろう。慌てて首を横に振った。 乙女か……女に生まれてくれば良かった、何度そう思ったか。弓削さんに聞こえないように心のなかでそう呟くヤスさん。

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