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番外編彼が大好きな、彼フェチのりんりんさん
「暗くて顔がよく見えないな」
男性の首根っこを掴むとそのまま外灯の下に連れていった。
「森崎がどっかで見たツラだって言ってたんだよ。やっぱりお前隆次だな」
耳元に囁きかけた。
「違います。誰かと間違っているんじゃないですか?」
「俺の目が節穴だって?苦労を分かち合い寝食を共にした弟分たちのツラを忘れるほど人でなしではない。九鬼と一緒にするな。九鬼総業から出奔したとき舎弟三人一緒に連れて出た。あのまま組に置いてきたら九鬼に嬲り殺しにされるのが分かっていたからな。三人のうち一人だけ行方が分からなくてな。ずっと探していたヤロウがいる。それが隆次、お前だ」
鋭い目付きで男性をじろりと見る鳥飼さん。
「カバン持ちの新入りで下っ端のツラを覚えているなんてな。やっぱアンタ、スゲーわ」
男性が自嘲した。
「森崎はもともと九鬼総業にいたからな。中学校もろくすっぽ行かずふらふらしていた俺とは違い国立大学卒のインテリだ。頭も切れる。記憶力もすごい。洞察力も半端じゃない」
「頭が良すぎて妬まれて恨まれて大変だわ。あんたもそう。貧乏くじと尻拭いばっか。普通さ足手まといになる舎弟は切り捨てるのにバカ真面目だよね。再就職先まで斡旋してさ、そこまでやる必要ないのに。余計なお世話だと思わない?なのになんで?」
「恋をしろ。おのずと分かる」
「は?なんだそれ。答えになってない」
ムキになる男性。鳥飼さんはふふっと余裕の笑みを浮かべると首根っこを掴んでいた手を離した。
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