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番外編彼が大好きな、彼フェチのりんりんさん
「神政会と楮山組の若いのがシノギのトラブルから取っ組み合いの喧嘩をしたようです」
「大金が絡むと目の色が変わるからな。とばっちりがこっちに来なければいいが」
そのとき彼の携帯電話の着信音が鳴った。パパ、パパって連呼する可愛らしい声に場が和む。
「いつの間にかたいくんとここちゃんバージョンになったんですね」
鞠家さんがクスリと笑った。
「一太がな、パパには癒しが必要だとかいって着信音をこれに変えてくれたんだ」
「そうだったんですね。俺も一太に頼もうかな」
鞠家さんの表情が和らいだ。
彼に電話を掛けてきたのはお姉ちゃんだった。地竜の手下たちが好き勝手していると小耳に挟んだんだけど。開口一番彼にそう聞いた。
「好き勝手にしているのは諸越とかいうサツのほうだ。至近距離から胸を撃たれて意識不明の重体だが。りんりんたちは地竜に命令された通りに粛々と作戦を遂行している。地竜の部下たちもわけありの者が多い。まさか日本人が地竜と宋以外に二人もいるとは思わなかったが……」
「どうした?」
「後ろ」
「後ろ?」
彼に言われた通り振り返る鞠家さん。うわぁ~~と驚いた声をあげた。
「失敬な」
仏頂面でいたのは宋さんだった。
そっちは楽しそうでいいわね。お姉ちゃんの声が電話越しに聞こえてきた。
「入れ替わり立ち代わり人の出入りが今日はやけに多い。死神のメンバーのたまり場になっているよ」
鞠家、悪いが宋の相手をしてやってくれ。小声でそう伝えると彼が先に家のなかに入っていった。
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