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番外編彼が大好きな、彼フェチのりんりんさん

「俺か?ちょうど良かった。俺は弓削に用があったんだ」 手に握っていたものを弓削さんに投げる宋さん。 「いきなしなんだべ」 戸惑いつつも片手でキャッチする弓削さん。 「それ、お前のだろ?返すよ」 「返すって言われてもな」 「彼氏とお揃いなんだろ?カフスボタン」 「だから彼氏じゃねえっ」 「彼氏だろ」 「違うってば」 悲しそうなヤスさんの顔を見た鞠家さんがまぁ、まぁ、落ち着けと弓削さんを宥め、宋さんにはそれ以上余計なことを言ったら二度と喋られなくするぞと脅した。 お揃いのカフスボタンを贈りあうくらい仲がいい弓削さんとヤスさんに嫉妬した芫さん。弓削さんの人としての尊厳を奪うだけでなく、弓削さんが大事にしていたカフスボタンまでも奪った。 安物だけどな。ヤスに似合うべと思ってシルバーの手彫りのをオーダーしたんだ。まさかヤスが同じものを同じ店でオーダーするとは思わなかった。そう話してくれた。 ぷいっとそっぽを向くとスタスタと歩き出すヤスさん。それをたまたま縁側から見ていた遥香と幸ちゃん。 「ヤスおにいちゃん」 遥香は絵本を掲げて、幸ちゃんはぶんぶんと大きく手を振った。 「遊ぼうって?もう寝る時間じゃないのか。しょうがねぇな、十分だけだぞ」 子どもたちの前でめそめそしている場合じゃないな。ヤスさんは気持ちを切り替えて二人のところに向かった。

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