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番外編彼が大好きな、彼フェチのりんりんさん
「あの人だかりだ。一ミリでもずれていたら無関係な人を巻き込む恐れもあったのに、的確に肩を狙った。肩が使い物にならなければ殺し屋としては致命的だ。よその組にもいるんだな、凄腕のスナイパーが」
「そうだな」
柚原さんがくすりと笑った。
「いつまですっとぼけているんだ。ますます腕を上げたな、柚原」
「だから俺じゃないって」
柚原さんが湯呑み茶碗を手に持ったまますっと立ち上がった。
「アイツは赤ん坊を抱っこし小さな子どもの手を引いて逃げようとしていた母親を見るなり豹変した。もともとの知り合いだったのか、それともガキの頃に何かあったのかもな。凶暴化するなにかが」
「莫ももしかして日本人か?いや、そんなまさか。でも青空と同じく誘拐されて大陸に売り飛ばされたなら、ないとは言いきれないか」
「さすがはインターポールに派遣されただけはある。察しがいいな」
普段のぱぱたんとしての顔とはまったく違う柚原さんのキリリと引き締まった精悍な表情にチカちゃんが驚いていた。それを見た橘さんが、
「そんなに違いますか?」
ププッと笑った。
「橘はアタシと違って見慣れているでしょう。どっちが本当の柚原さんかたまに分からなくなるの」
「そうですか、そんなに違いますか?」
笑いの坪に入った橘さん。しばらくの間笑っていた。
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