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番外編彼が大好きな、彼フェチのりんりんさん
「ママ、お月さん真っ赤だよ」
一太に言われ藍色の空を見上げた。
「今夜は皆既月食なのかな?」
「かいきげっしょくってお月さんが欠けるんだよね?」
「そうだよ。一太、詳しいね」
「うん、だってパパとママの子だもん」
誇らしげな表情を見せる一太。その時ふと一抹の不安が背筋をそろりと撫でた。
「何もないといいんだけど……」
「ママ何か言った?」
「ううんなんでもない」
一太に不安な気持ちを抱かせる訳にはいかないもの。笑って誤魔化した。
その頃、山龍さんとりんりんさんたちは立ち寄ったコンビニエンスストアの駐車場で先回りして待ち伏せしていたと思われる黒づくめの男たちに囲まれていた。
相手にするな、車に戻るぞ。山龍さんがりんりんさんの肩を軽く叩いた。【菱沼組の縄張りでお前ら一度ならず二度も事件を起こすのか?いい度胸をしているな。よほど死にたいとみえる。どけ、邪魔だ】中国語で捲し立てて男たちをじろりと睨む山龍さん。他者を寄せ付けない圧倒的な威圧感に気圧されて思わず後ずさりする男たち。
「命があっただけもうけもんだ。人を殺しすぎたんだ、アイツは。だから天罰が下った」
山龍さんがボソリと呟いた。
「それはどうかな。この死に損ないが」
三人の行く手を阻むようにスーツ姿の男が気配もなく現れた。
「やけに静かだと思ったらみんな寝たんだな」
彼が足音を忍ばせて寝室に入ってきた。
「子どもってなんで狭いところが好きなんだろうね」
「なんでだろうな」
みんな自分の布団には寝ないで一太にしがみついてすやすやと寝ていた。
一太、暑くない?寝苦しくない?額にかかる髪を指で左右にそっと分けた。
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