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番外編彼が大好きな、彼フェチのりんりんさん

「隆次たちは右も左も分からない新入りで、組長のツラも遠くからしか拝んだことがないのに隠し子の存在なんて知るわけない。とばっちりもいいところだ」 「娘に用はない。倅の居場所を言えば見逃してやってもいいがなと言ってきたそうだ」 「睦は善栄たちにとって邪魔者でしかない。だから人質として他所の組に追いやられた。睦は何も知らない。見逃してやると言いながら今の今まで見逃したことがないだろう。有無言わず口封じに殺される」 「それが連中の常套手段だ」 「隆次はなんと答えたんです?」 「人質に出されていた倅より娘のほうが内情に詳しい。娘はあの有名なひかりのみこの教祖だ。金も捨てるほどあるとな」 「金が目的なら喜んで飛び付くでしょうね」 「金が目的ならな」 「他の理由があるとするなら善栄に対する恨み辛みしかない。ヤツに恨みを持つ人間は大勢いる」 「だからいまだに九鬼家の墓石に悪さをする罰当たりな輩がいるんだろう。ボヤ騒ぎもあったばかりだろう」 「え?ボヤ騒ぎですか?」 鳥飼さんが驚いたような声を出した。 「なんだてっきり知っていると思ったが」 「余計な心配をかけたくないのは分かる。分かるが……」 鳥飼さんが深いため息をついた。颯人に今の状況を伝えないと。睦を守れるのは彼しかいない。 「鳥飼、茨木さんを頼れ」 「オヤジはなんでもお見通しですね」 「何年一緒にいるんだ?九鬼にいたときよりは短いがな」 ニヤリと笑う彼。

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