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番外編国井さん、熱烈に口説かれる
「すぐに帰るって言ってなかった?根岸さんと喧嘩でもしたの?」
「喧嘩はしていない。奈梛を置いたらとんぼ返りするつもりでいたんだ。こうも立て続けに事件が起きているんだ。俺だけさっさと帰るわけにはいかないだろう。根岸にはちゃんと連絡してある」
「あら、残念だわ」
「頼むから荒波を立てないでくれ。そういえば国井からまだなんの連絡もないのか?」
「うん。あ、でも山龍さんに手紙を渡してって頼んだわ。ここを発ってずいぶんと時間が経過したけどなんの音沙汰もないのよ」
「噂をしていればそのうち連絡がくる。心配するな。チカ、ちゃんと帰ってこいよ。寝ないで待っているから」
「ありがとうおやっさん」
チカちゃんの目が潤んでいた。
「チカの様子はどうでしたか?」
広間に戻ってきた伊澤さんにさっそく声をかける彼。
「いつもと変わらない」
「良かった」
彼が伊澤さんにメモ紙を渡した。
「ふざけんな!」
読むなり怒りを露にする伊澤さん。メモ紙をぐしゃりと握り潰した。
「これが公安のやり方か」
「諸越の罪をなかったことにするために消息不明の国井に罪をなすりつけて闇に葬る魂胆だろう。公安のやりそうなことだ」
「大山を退職に追い込んだだけでは満足しないのか」
「上層部は目の上のたん瘤を一つでもなくそうと躍起になっているのかもな」
「オヤジ、このまま好き勝手にさせるのか?黙って見ているのか?」
「死神が都内の報道局と新聞社に犯行声明を出した。瀕死の重症を負った捜査員を人質にするために事故現場から拉致したってな。真相を正しく報道しろ。出方次第では捜査員を殺すと」
「チカはこのことを知っているのか?」
「いや、まただ。どう伝えたらいいものか考えあぐねている」
「その役目、俺が引き受ける」
「悪いな、伊澤さんに損な役回りばかりさせて」
「このくらい朝飯前だ。こんな老いぼれでもオヤジに頼ってもらえるのは嬉しいからな」
「老いぼれって……まだまだ若いですよ。これからじゃないですか?第二の青春は。根岸との新婚生活を楽しまないと。人生一度きりですよ」
「新婚生活って……」
伊澤さん、照れるのかな?顔が赤くなった。
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