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番外編国井さん、熱烈に口説かれる
「……ということがあってえらい目にあったんだ」
阪井さんが深いため息をついた。
「そうか。それは悪いことをしたな」
クククと愉しそうに笑う彼。
「まさか縣一家の長男坊がいるとは誰も思わないだろう。しかも婿まで一緒だ。何事かと思ったぞ」
「足止めをしてすまない」
「今日中に東京に着くはずが、予定がすっかり狂っちまった。でも、どっちみち会合は明日だしちっとゆっくりしてから出発することにした」
「会長が喜びます」
「大事な会合だからな。今日は呑まないって決めてんだ。頼むから呑ませないでくれよ」
「分かってますよ」
彼が笑いながら答えた。
「にしてもサツに絡まれてもまったく動じなかった。堂々としていた。まるっきり別人でたまげだぞ。能ある鷹は爪を隠すはまさに信孝のためにあるようなことわざだな」
「そうですね。くれぐれもこの事はナオには内密でお願いしますね」
「あぁ、信孝にも頼まれた。余計な心配を掛けたくないってな」
彼と阪井さんが広間でお茶を飲みながらそんな会話を交わしていたら、阪井さんが来たと若い衆から聞き付けた度会さんが缶ビールを携えてさっそく顔を出した。
「俺に隠れて内緒話か?つれないな」
「内緒話はしていない。な、卯月?」
「あぁ。阪井さんの言う通りだ」
阪井さんに聞かれて彼が相槌を打った。
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