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番外編国井さん、熱烈に口説かれる

「組長代理は槇島の手下共に根も葉もない噂を立てられて迷惑をしているようだな」 「後継者を渋川さんに指名するというオヤジの遺言状は本物です。それを偽物だと言い張る彼らの気が知れません。槇島さんが組長になれば組の分裂は避けようがありませんからね。渋川さんは血で血を洗う戦いを避けるため相手の出方を静かに伺っています。よそ者である卯月さんが組長になると決まったとき菱沼組は一切揉めなかったと聞きました。なぜ卯月さんだったんですか?将来有望な組長候補が何人もいたはずなのに」 「それはな卯月が愛妻家だからだ」 「へ?」 「天性のカリスマ性を持っているからとでも答えると思ったか?」 「いえ」慌てて首を横に振る手塚さん。 「夫婦円満だと争い事が起きない。カミさんの尻に敷かれ、かかあ天下のほうがうまくいく」 ごほんごほんと橘さんがわざとらしく咳払いをした。 「だからといって橘のことを言ってないぞ」 「分かってますよ」 にっこりと微笑む橘さん。それを見た手塚さんの顔からさぁーっと血の気が引いた。 「若いのを食い物にするヤバい変態だとありもしないことを二人に吹き込んだ者がいるんですよ。組長代理と私はまだまともな方なのに。ヤバい変態は槇島さんのほうなのに。酷いと思いませんか?言われっぱなしで弁解の余地すら与えられないんですよ。実は三日前、二人がなかなか起きてこないので寝床を見に行くとすでにもぬけの殻でした。部屋住みの仕事が嫌で逃げ出すことはよくあることです」 「シーツに血がついていたのにか?よくあることだと簡単に片付けていいのか?」 「さすがは渡会さんです。裏社会の情報通ですね」 満面の笑みを浮かべる手塚さん。

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