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番外編 国井さん、熱烈に口説かれる

酒は飲んでも飲まれるな。トラブルの原因にもなるからほどほどにしろと会長が常日頃から口を酸っぱくして言ってるからか、菱沼組には酒癖の悪いのがほとんどいない。参ったな。ヤスさんがやれやれと深いため息をついた。 「ヤス、力持ちを助っ人に呼んだからそれまでの辛抱だ」 「ヤス兄貴、この状況を見てすごく楽しんでいませんか?」 思わず怨み節を口にすると、 「気のせいだろ?」 ヤスさんがくすりと笑った。 「信孝さんすみません」 「別に気にしていない。なんでこんなに鞄が重いんだ?金塊が入っていたりして」 手塚さんが脱ぎ捨てた上着と鞄を両手で抱える信孝さん。冗談で言ったつもりだったけど、手塚さんの表情が一瞬だけ変わったことを信孝さんは見逃さなかった。 「おぃ手塚、家に着いたぞ」 ナオと子どもたちがいなくてある意味良かったのかもしれないな。酔っ払いの相手なんてしたくないもんな。 「俺はぜんぜん、酔っ払ってなんかない」 「はい、はい。分かりましたよ」 若いのに面倒を掛けさせるわけにはいかないと組事務所の隣の部屋に手塚さんを連れ帰った信孝さん。 「ウーありがとう」 強力な助っ人とはウーさんのことだった。 俺は酔ってない。一人でも歩けるとごねる手塚さんを有無言わさず肩に担ぎ、ここまで連れてきてくれた。 「ガキだな、ウーのほうが大人に見える」 言葉が通じないから何を言われたか分からず、不思議そうに首をかしげるウーさんに、 「悪口は言ってないから安心しろ」 にっこりと微笑み掛ける信孝さん。 「斉木が迎えに来るまで組事務所で待っていたらどうだ?」 斉木先生の名前が出てくるなり破顔するウーさん。嬉しくてたまらない。そんな感じだった。

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