4111 / 4115
番外編 信孝、愛してる
それから三十分後。
「信孝ひどいわ。アタシっていう可愛い男の子がいるのに。浮気現場を堂々と見せつけるなんて」
目に涙を浮かべて鼻をずずっと啜る宋さん。
「誰が可愛い男の子だって?」
「アタシよ、アタシ」
「ヤロウの面して女声を使うな。それと泣き真似はやめろ」
「泣き真似なんかしつないわよ。これはほんとうの涙よ」
「分かったよ。泣かせたりして悪かったな」
「分かればいいのよ。分かれば。で、俺にどうしろって?緊急事態だから助けてくれってボスが愛してやまない未知がわざわざ電話を掛けてきたからしょうがないから来てやったんだ。明日も朝から仕事なんだぞ。感謝しろよ」
がらりと声色が変わる宋さん。
「コイツから俺を引き剥がしてほしい。しがみついていて離れないんだ。暑くて汗が止まらない」
「そんなのお安いご用だ」
チラッと手塚さんを見る宋さん。
「ほぉ~~これはこれは」
「くれぐれも彼氏を泣かせない程度にしろよ」
「分かってるよ」
にんまりと笑う宋さん。
信孝さんが手塚さんを離そうとしても、いやいやを繰り返して。ピタリとねっぱってびくともしなかったのに。宋さんはものの数分で信孝さんを助け出した。
「ありがとう宋。恩に着る。さてとこれをどうしたものか」
額や首もとの汗を手で拭きながら黒い鞄をじっと見つめる信孝さん。
ともだちにシェアしよう!

