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番外編 信孝、愛してる

すごくあたたかい。鍛え上げた二の腕は逞しくて安定感抜群だ。胸板が厚いわりにはすごく柔らかい。この触り心地がなんともいえない。寝心地も最高だ。まさしく至福のひととき。 「……さん」 誰だ私を呼ぶのは。邪魔しないでほしい。 手で払うと、 「手塚さんいい加減に起きてください」 「よほどグーで殴られたいみたいだな」 ポキポキと指の関節を鳴らす音が聞こえてきた。 信孝さんの声じゃない。この声はオヤジが愛してやまないねえさんの声だ。あれ、でもなんで?手塚さんがぱっと目を覚ますと青空さんと目があったものだからビックリして飛び起きた。 「ナオの亭主を抱き枕にするとはいい身分だな。槇島は人妻好きで、手塚は妻帯者好きか?」 「カシラと一緒にしてもらっては困る。あれ?」 手塚さんがあたりをキョロキョロと見回した。 「ない。嘘だろ」 顔面蒼白となった。 「信孝が菱沼金融に預けた。アレが失くなったらどうせ信孝のせいにするだろう?信孝はベロンベロンに酔っ払ったおまえを文句ひとつ言わずここまで連れて来てくれたんだ。鞄は佐治が持ってきてくれたんだ。感謝しろ」 手塚さんは、はい、蚊の鳴くような声で返事をするとしゅんとして項垂れた。みっちりと絞られて。よほど堪えたみたいだった。 前髪が跳ねていてもまったく気にすることなく、急いで菱沼金融に鞄をとりに向かった手塚さん。腕を胸の前で組んだ鞠家さんにひたすら平謝りした。

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