4114 / 4115
番外編 信孝、愛してる
「実は槇島さんの妻が組の金を持ち逃げしたんです。期日までに返済しないと先代の家屋敷が差し押さえられてしまいます。先代の子どもだと名乗り出た男と養子である槇島さんが先代の遺産を巡り係争中でして勝手に処分できないんです」
ポツリポツリと話し始める手塚さん。
「オヤジから聞いた話しによると宇賀神さんと槇島さんは養子縁組をしては解消して、また養子縁組してを繰り返しているそうだな。そりゃあややこしいことになるのも当然といえば当然だ」
「生涯現役を豪語していましたからね。いろんなことが重なり心労が絶えず精神的に弱っていたところを槇島さんに利用されたんです。槇島さんを破門にするはずが、逆にうまく丸め込まれてしまったんです。金と女は魔物です。あ、でも愛妻家の鞠家さんには関係のない話しですよね。羨ましいですよ、卯月さんといい鞠家さんといい信孝さんといい夫婦仲がほんとうによくて」
「この際身を固めたらどうだ?好きな人いるんだろう?」
「い、いませんよ」
図星だったのかドキッとする手塚さん。
「ぺらぺらとよく喋る烏ですね」
ボールペンを親指のまわりで回転させながら柚原さんがため息混じりに彼に話しかけた。
「嘘も方便とよく言うだろう?ただ単に他人である俺たちに迷惑を描けたくないだけかもしれないぞ」
「オヤジ、アイツの腹のなかは真っ黒ですよ。手塚のポーカーフェイスはその筋では有名な話です」
「柚原、その物騒なモノ……」
「物騒なモノ?」
彼の視線がくるくると回るボールペンに向けられた。
ともだちにシェアしよう!

