4115 / 4115

番外編 信孝、愛してる

「もともとこれは槇島さんの手下が持っていたものです。危ないので返そうと思っただけですよ。ペン型のスタンガンでねえさんを襲い拉致しようなんて許せません。槇島さんの悪趣味にいちいち付き合ってなんかいられません」 「足を一本折ればよかったな」 「それじゃあぜんぜん足りませんよ」 柚原さんが給湯室のドアを開けた。 「よ、手塚。よく寝れたか?」 そう言いながら。 「盗み聞きとは。趣味が悪い」 「それはお互い様だろ?槇島の忘れ物だ。返してくれないか?」 ボールペンを手塚さんの前に置く柚原さん。 「一見するとなんの変哲もない普通のボールペン。でも実際はスタンガン。一瞬の隙をついて女性を気絶させて拉致して、槇島さんの悪趣味の餌食にする。全部処分したはずなんですがね。まだあったんですね。やはり狙いは未知さんでしたか」 「オヤジはたいそうお怒りだ」 「無理もありませんね。反論の余地もありません。いま、菱沼組を敵に回すとうちの組は解散に追い込まれます」 「だろうな。跡目争いどころではなくなる」 「オヤジの結婚も破談にもなりますね」 「だな。頭のキレるおまえならどうするべきか。いちいち言わなくても分かるよな?」 「鞠家さんもですが、柚原さんもなかなかの策士ですよね。昼行灯は世を欺く仮の姿と耳にしたことがあります。ほんとうのことだったんですね」 「そうか?手塚ほどではないだろう?あ、でも俺、こう見えても一般人、カタギだ」 「カタギですか?どの口が仰っているんだか。柚原さんって面白い人ですね。オヤジが柚原にだけは気を付けろと言った意味がなんとなくですが分かったような気がします」 手塚さんがクククと声を出して笑いだした。

ともだちにシェアしよう!