4118 / 4124
番外編 災難続きの信孝さん
「おぃ、イッチ」
菱沼金融を飛び出し人混みに向かい走り出す鞠家さん。警備を担当していた五人の若い衆のうち、二人が何事かと慌てて追いかけた。
「カシラ、足が速いです」
「速すぎます。知り合いでもいたんですか?」
なんとか追い付く二人。肩で息をつきながら呼吸を整えた。日がかんかんと照っていて汗が次から次に吹き出してくる。
「悪かったな、いきなり走り出して。菱沼金融を覗き込んでいた男が知り合いによく似ていたんだ。どうやら他の空似だったようだ。そもそも東京にいるはずのアイツが福島にいるはずがないからな」
「覗き込んでいたって、それほんとうですか?」
「四季さん一人にして大丈夫なんですか?何かあってからでは遅いですよ」
「柚原に至急戻るように頼んだ」
「それなら安心です」
「柚原さんがいれば鬼に金棒です」
ほっとして胸を撫で下ろす二人。
「なぁ、お前ら、遠慮せずに正直に答えてほしい。手塚をどう思う?」
「どう思うっていきなり聞かれても……」
返答に困る二人。
「つまり俺が聞きたいのは、嘘つきか馬鹿正直かだ」
「手塚って飼い主によく似てますよね」
「決して本音を見せない秘密主義。何を考えているか分からないので気味が悪いです」
「そうか、お前らもそう思ったか」
顎に手をおいて相槌をうつ鞠家さん。
ともだちにシェアしよう!

