4129 / 4130
番外編 災難続きの信孝さん
「クエスチョンマークだらけだろ?人生何があるか分からない。でもな斎藤、どれだけオヤジからラブコールをもらってもお前だけはヤクザになるなよ。吉村さんを泣かせるような真似だけはするなよ」
「玲士さんは何でもお見通しなんですね」
斎藤さんが自嘲気味に呟いた。
「当てずっぽうで言ったのに。まさかの本音だったとは。もし悩みがあるならオヤジに一度相談してみたらどうだ?」
玲士さんの問いかけに斎藤さんが小さく頷いた。
「えっと……これから……菱沼組夏の恒例行事の第一回スイカ割り大会はじめます。恐れ多くも司会進行を仰せつかったのは……」
この日のために勢揃いした組のみんなの前で、『本日の主役』と子どもたちが書いたたすきを掛けて、かなり緊張した面持ちでマイクを握るのは玲士さんだ。
「おぃ、玲士、いつから夏の恒例行事になったんだ?」
「スイカより酒だべした」
「えっと、その……」
先輩方に冷やかされてたじたじになる玲士さん。
「新入りなら必ず受ける試練みたいなもんだ。玲士にとっていい経験になるだろうよ」
陽葵を抱っこしてあやしながら邪魔にならないように端っこのほうで見ていたら彼に声を掛けられた。
「そういえばN運送にサツの家宅捜査が入った」
「N運送ってもしかして……」
「あぁ。宋の潜入先だ。料金所で過積載を疑われ検査を拒否してUターンして逃げようとした。ドライバーのその態度に高速道路パトロール隊員が不審を抱きすぐにサツに通報したそうだ。積み荷を調べたところ荷物の中から違法薬物が見つかった。どうやら内部告発もあったようだ」
「宋さんは?潜入しているのが相手にバレたんじゃ……」
「アイツは無事だ。今頃何食わぬ顔で上司とサツの行動をじっくりと観察しているんじゃないか?内部告発をしたのは俺ではないと言っているし。たまにはアイツのことを信じてやろうかなと思っている」
「オヤジ、なんで端っこにいるんですか?」
「オヤジがいなかったら始まりませんよ」
声がかかり、
「なんだ、もう見付かったのか。未知、陽葵、行ってくる」
にこりと優しく微笑むともといた場所へと戻っていった。
ともだちにシェアしよう!

