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第2話*
「お、お願いします」
オレは軋む音が聞こえそうなほどぎこちなく頭を下げた。対する吸血鬼の彼は爽やかに笑っている。
「男とセックスするのは初めて?」
「はい。というか、男女どちらも……」
「いいんじゃない? 初めては誰にでもあるものだよ。吸血鬼になると病気から解放されて、心も身体もすごく楽になるから、ひきこもらなくてもよくなって、学校も行けるし、仕事もできるようになる。昼間眠いけど、夜勤専門の割のいい仕事に就けるし、友だちと遊ぶこともできるようになる。吸血鬼はまだ人数が少ないけど、ネットで探して出会って一夜限りの付き合いでも、パートナーとして付き合うこともできるよ」
ベッドに並んで座って、ペットボトルの飲み物を勧めてくれながら気さくに話し掛けてくれて、気持ちはずいぶん和らいだ。
「吸血鬼になって不便なことってありますか」
「僕は思いつかないな。食糧は血液センターから供給されて食費はかからないし、今は治験に協力するとき以外は夜勤専門の看護師として働いてて、生活にも多少余裕が持てる。年を取らないから、キャリアも経験も人間とは比べものにならないくらい積める。人間の死に接するときは悲しいし寂しいけど、今はまだ全員が吸血鬼になれる訳じゃないし、吸血鬼になりたいかどうかは人それぞれの考え方だから、それは仕方がないね」
「なるほど」
「早く第三相試験が終わって、誰でも望む人が吸血鬼になれる日が来るといいと思うよ」
そう言って鋭い八重歯を見せながら笑う顔はわずか数センチの距離で、目を閉じるとすぐ唇に柔らかな感触があった。
動画やマンガで見たことはあっても、自分の肌で経験するのは初めてで、刺激の一つ一つに身体が震えた。
「んっ、ああ……そんなにしないで……」
胸の粒を口に含まれ、舌の先でなぶられると全身に疼きが伝播した。
「乗り越えたら気持ちいいから、頑張って」
甘い笑顔で誤魔化されて、左右の胸の粒がぷっくり腫れるまで捏ねられ、舐められ、つままれた。その刺激は下腹部へ蓄積されるようになり、たまらず膝をすりあわせる。
「気持ちよくなりたいって思うようになってきた?」
彼は問いながら脇腹へ唇を這わせ、少しひやりとする掌で胸から腰を撫で回した。そのさらさらとした感触に、身体はまた高まっていく。
唾液に催淫作用があるというのは本当らしく、先ほど噛まれたうなじと、胸の粒にしつこく甘い疼きが残る。思わず人前で自分の胸を触りそうになって、すんでのところで堪えた。
「あ、疼くでしょ? 気にしないで触って。吸血鬼になったら、自分一人でするときも唾液を塗ると気持ちいいよ。そんなに長時間の効果はないから大丈夫」
「はあ」
あまりにもさっぱりと言われてあっけにとられるオレに、彼は尖った八重歯がチャーミングポイントにすら思える爽やかな笑顔を見せた。
「吸血鬼になるための手続きとはいえ、セックスは気持ちいいほうがいいでしょう? 遠慮しないで。声も出して平気だし、たくさん乱れてくれたほうが、僕もやりがいがある」
にっこり笑うと彼はオレの下腹部へ顔を埋め、オレのまだ柔らかい雄蕊は口に含まれた。
「あっ! はあんっ」
いやらしいマンガや動画でどうしてこの描写が多用されるのか、オレは心底理解した。熱くてぬるぬるしてたまらなく気持ちがいい。自分でもどんどん膨らんで硬くなっていくのがわかる。
裏筋を舌で舐め上げられ、鈴口を舌先で抉られ、水音を立てて唇で扱かれて、全身が熱くなった。
「ダメっ、出ちゃうっ!」
却って深くくわえ込まれて、オレは彼の口内へ白濁を放った。
「うわっ」
きれいに舐め取られて、彼が舌なめずりし、うなだれたものが外気に晒される頃、また疼き始めた。我慢できずに疼くペニスを手で覆うと、彼は笑った。
「唾液に催淫作用があるから、また変になってくるでしょう? 吸血鬼になるとエッチが止まらなくなるよ。はい、お尻見せて」
ベッドの上に四つん這いになり、お尻を向けると、洗ってあるそこへ直接口をつけ、窄まりを舌先でくすぐる。
「あ、そんな場所。きたないからっ」
「吸血鬼だから大丈夫。ここを舐めたくらいで病気になったりしないよ」
「そ、そうなの……?」
舐められ場所は疼いて、擦って欲しいような気持ちになる。
もぞりと動くと彼はさらに自分の指を舐めて、その指を中へ突き立てた。
「んっ!」
「内側も唾液をつけておくと気持ちいいからね」
ぐりっと腹の内側の一点を撫でられて、オレはシーツを掴んだ。
「ここ、気持ちいいよね。これからしっかり刺激してあげる」
てのひらに落とした自分の唾液を塗りつけながら、彼は振り返るオレの頬を撫でた。
「しっかり息を吐いて。そう……」
と話している途中で不意を突いて一気に押し入ってきた。衝撃は強かったが、疼いていた場所を擦ってもらえた嬉しさが勝った。
「ああっ……ひゃあんっ。もっと、もっと擦って。気持ちいい」
「素直に楽しんでくれると嬉しいな。頑張っていっぱい動くね」
さらにローションが足され、摩擦の苦痛は和らぎ、快楽だけが生まれ続ける。
「激しくして、激しく。お腹、壊れちゃうっ」
枕を抱えて激しく打ち付けられる快感に素直に声を上げ、夢中になった。
初めて覚えたセックスの味は最高に気持ちよくて、気づいたときには彼の腰にまたがって、唾液でうずく左右の乳首を引っ張ってぐりぐりとねじりながら、腰を振りまくっていた。
「はあん、気持ちい……の、とまんない……」
何度も放たれた精液がつなぎ目で気泡を含み、つぶれる音を立てていて、そのぬめりでさらに自由に腰を動かした。
「また出そう……っ」
彼は眉間に皺を寄せ、顎を上げてオレの腰を掴み、オレは促すために更に激しく腰を振った。
「出して。いっぱい出して、オレを吸血鬼にして……っ!」
カッと全身に熱がまわり、オレが身体を震わせている間に、内壁に飛沫が打ち付けられた。
意識がもうろうとして、ふわふわと白い霧の中を漂いながらオレは彼の胸の上に崩れ落ちた。
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