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第5話

春side 昔から器用な方でなんでもそこそこ出来た。頑張らなくても勉強では規模的に一桁の順位で、運動もそこそこに出来て…。 容姿もそんな悪くないから恋愛だってそんなに苦労しなかった…。今の恋人だって簡単に手に入った…。入ったのに…、心は手に入らなかった…。 「お邪魔しま〜す」 「いらっしゃい、部屋二階なので…」 そんな彼の部屋で、僕はどうやって手に入れようと考えて早々に諦めた…。彼の部屋はまるで恋人を呼ぶためだけに整えられたような部屋だった…。 それも女の子…。可愛らしいぬいぐるみや淡い色合いを取り入れながらもシックな感じになってて…。負けたって思った…。 「へぇ〜。結構綺麗な部屋だね〜」 「酷いですよ……。僕だってちゃんと整理整頓くらい出来ますっ!」 「ごめ〜ん。なんか、もっと散らかってると思った〜」 だからこそ生きているのがつまらなかった…。頑張らなくても欲しいものはそこそこ手に入って、逆に欲しいものはどれだけ頑張っても手に入らなくて…。 諦める事が癖になって、何に対しても真剣になれなくて…。無気力だった…。 「ヤる?君はどっちがいいの?」 「その前になんで告白したのか聞かせてよ」 「いつもオドオドしてるのに、なんか、芯が強く見えて羨ましくなった。欲しいものを手に入れるために頑張ってる様に見えて、何に対しても真剣で…。そんな姿や、目が綺麗で…。僕のことだけを欲して、僕の内面までちゃんと見てくれる気がした…。告白したら、真剣で…、綺麗で、そんな君の視線が僕だけのものになるのかなって思ったら凄く欲しくなった。けど、手に入らなかったから要らなくなった」 「それって、こんな目の事?」 その目は、僕の事をしっかりと捕らえて、鋭く光っていた…。僕の欲していたもの…。手に入らないと諦めた視線だった……。 「ぁっ……んっ…ぅ……。な、…んで……」 「君自身をちゃんと見てないのは、君だよ。俺はずっと見てた。ずっと……。欲してたんだけど?」 「………だめ…、やっぱ、だめっ…。見ないで……。僕、汚いから、見られたくない…」 欲しかったものが手に入ったと知った瞬間。もっと欲しいと思った……。もっとその視線を、心を、その熱を……。いっぱい触れて欲しくて、触りたくて…。もっと、もっと…いっぱい欲しい……。 そんな汚い感情に支配されて、気持ち悪くなって…。怖くなった…。怖くなって、逃げ出したくて、見られたくなかった。今見られたらそんな汚い感情を全て見抜かれてしまう気がしたから……。

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